BOXING

【黄金のミドル】トーマス・ハーンズ③(Thomas Hearns)
J・ミドル級王座獲得!1982.12.3
ウイルフレッド・ベニテス戦
WBC世界J・ミドル級(2階級制覇)

黄金のミドル(中量級)とは?

「黄金のミドル(中量級)」とは、
1980年代のプロボクシング界で最も人気のあったクラス(ウエルター級~ミドル級)で、
★シュガー・レイ・レナード
★トーマス・ハーンズ
★マービン・ハグラー
★ロベルト・デュラン
の「ビッグ4」と称される華のあるスーパースター4人を中心にビッグファイトが繰り広げられ、大いに盛り上がった時代を言います。

■トーマス・ハーンズ
階級の中でも高い身長と長いリーチを使ったデトロイトスタイルから繰り出されるフリッカージャブとマシンガンのように繰り出されるラッシュから「ヒットマン(殺し屋)」と称され恐れられ、史上初の4階級制覇、さらに史上初の5階級制覇を成し遂げる。

①WBAウエルター級タイトル獲得(ホセ・ピピノ・クエバス戦)

②ウエルター級王座統一戦(シュガー・レイ・レナード戦)

④石の拳、ロベルト・デュラン戦

⑤世界ミドル級挑戦!マービン・ハグラー戦

⑥世紀の再戦!レナード戦Ⅱ

ウエルター級王座統一戦の敗戦後

1981年9月16日に行われた世界ウエルター級王座統一戦は、「THE SHOWDOWN(世紀の一戦)」と称され、ラスベガスのシーザースパレス特設会場に2万5千人を集め開催、
WBAのチャンピオンであったハーンズは、終盤近くまで優位に試合を進めたが、
WBCのチャンピオンであるシュガー・レイ・レナードの狙いすましたカウンターパンチを喰らい、立場を逆転され14R1分45秒TKO負け。

敗戦後のハーンズは、階級をミドル級に上げ再起、
1戦目は3か月後の12月に10R判定勝ち、その後2戦目(’82.2月)は、わずか108秒での1RKO勝ち、3戦目(’82.7月)は、観戦するレナードの前で危なげなく8RTKO勝ち、
再起後、ミドル級で3連勝のハーンズには、同級チャンピオンのハグラーあるいは、1階級下げたJ・ミドル(今でいうスーパーウエルター)のベニテスに挑戦すると噂が飛び交います。

1982年12月3日、2階級制覇達成!

トーマス・ハーンズの2階級めのタイトル挑戦の相手はWBCのJ・ミドル級チャンピオンのウイルフレッド・ベニテスとなりました。
ベニテスは、17歳でJ・ウエルター級のタイトルを獲得して以来、ウエルター(レナードに奪われる)、J・ミドル、と3階級制覇に成功し、このJ・ミドルのタイトルは2度防衛中、2度目の防衛戦の相手は「ビッグ4」のひとりであるロベルト・デュランです。

ハーンズにとって2階級制覇の挑戦、ベニテスにとっての3度目の防衛戦は、
1982年12月3日、ニューオリンズのスーパードームで1万2千人の観客を集め開催、
セミ・ファイナルでは、ウイルフレッド・ゴメスの17回目の防衛戦(J・フェザー)、ルペ・ピントール戦も行われています。(ゴメスの14RKO勝ち)

2人とも1958年生まれ、24歳同士の対戦は、
上背と体格で優るハーンズが長いリーチを有効に生かし、左ジャブをベニテスの顔面にヒットしてチャンピオンをリード、5Rには、右ストレートをチャンピオンのアゴに命中させダウンを奪う、さらに6Rにはコーナーに詰め猛打をボディーに集め追い込んだがゴング、
9Rはチャンピオンの逆襲、左フックを顔面に叩きこんでハーンズを尻もちをつかせるダウンを奪う、
カウンターパンチャーのチャンピオンとアウトボクサーの挑戦者が一度ずつダウンを奪う見ごたえのある内容となった。
試合中盤に右手を負傷したハーンズは、左をそれまで以上に有効に使い、終盤にはジャブでベニテスのバランスを崩しラウンドを取る。
15Rの判定は、144-139、146-136、142-142、と2-0でハーンズの勝利。

ハーンズの右手の負傷は、脱臼、再起戦まで半年以上、初防衛戦までは1年以上間を取ることになってしまいました。

勝利したハーンズの戦績は、この試合までで36勝1敗32KO勝ち、
王座陥落したベニテスは、この試合が最後の世界戦となります。

「早熟の天才」ウイルフレッド・ベニテス(Wilfred Benitez)

ウイルフレッド・ベニテス(Wilfred Benitez)は、1958年9月アメリカ合衆国ニューヨーク州生まれのプエルトリコのプロボクサー。
史上最年少である17歳6か月でWBA世界J・ウエルター(スーパーライト)級のタイトルを獲得、
その後、WBC世界ウエルター級、WBC世界J・ミドル級のタイトルを獲得し3階級制覇を成し遂げる。
「早熟の天才」として知られ、幼少の頃から厳しく父親に指導され、練習をこなしボクシングの才能を開花、プロ入り後にはその反動で練習を嫌い、贅沢し散財するように、
レナード戦前にはわずか1週間の練習しかしていなかったとも・・・

この練習嫌い・練習不足が原因で試合中も被弾することが多くなり、プロ生活後期にはパンチドランカーの症状が発症、引退後には目も見えず、立つこともできない重度の後遺症により廃人同然、まともに生活できないどころか自分を認識できない心神喪失状態となり、姉の介護を受けながら静かに暮らしているとのこと。

通算戦績:62戦53勝(31KO)8敗1分、
獲得タイトルは、
 ■WBA世界ジュニア・ウエルター(スーパーライト)級王座・2回防衛
 ■WBC世界ウェルター級王座・防衛1回
 ■WBC世界ジュニア・ミドル(スーパーウェルター)級王座・2回防衛
黄金のミドル、ビッグ4との対戦は、
 ■1979.11.30、WBC世界ウエルター級タイトル防衛戦、レナード戦、15TKO負け(王座陥落)
 ■1982.1.30、WBC世界ジュニア・ミドル級タイトル防衛戦、デュラン戦、15R判定勝ち(防衛②)
 ■1982.12.3、   〃   、ハーンズ戦、15R判定負(王座陥落)

17歳という若さで初タイトルを獲得、3階級制覇という偉業を達成しながら、ビッグ4(ビッグ5?)の仲間入りができなかったウイルフレッド・ベニテス、ビッグ4の3人と対戦したこともあり、
個人的には、黄金のミドルの準主役一番手と認識しているボクサーです。
たくさん稼いだお金はギャンブル狂の父親に使われたり、プロモーターに騙されて盗まれてしまったとのこと、少しでも介護しているお姉さんの手に残してあげたかったですね。

ハーンズの次のビッグファイトは?

最終的に5階級制覇を達成するトーマス・ハーンズですが、
ベニテスから奪ったジュニア・ミドル(スーパーウエルター)のタイトルを4回防衛することになります。
その、2回目の防衛戦の相手は、
石の拳(Hands of Stone)、ロベルト・デュラン(Roberto Duran)です!

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